唯一無二の希少革で何を仕立てるか ― 熊革
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熊革 / 京都産ツキノワグマ
熊革は、一般的な皮革の文脈では測れない素材だ。
牛や馬のように規格や安定供給を前提とするものではなく、野生の個体から得られる以上、その革質は一点ごとに大きく揺れる。
その揺らぎ自体が、この素材の本質でもある。
まず現れるのは、表面の情報量。
深く立ち上がるシボ、無数に残る毛穴の痕跡、部位ごとに異なる肌理。
整えられた革にある均質な美しさではなく、皮膚が持っていた緊張や緩み、脂の流れまでもがそのまま刻まれている。
繊維は太く、構造は粗い。
だが単に荒いのではない。
密度の高い部分と、やや膨らみを持って沈む部分が同居し、場所ごとに質感が変わる。
そのため見た目には荒々しく、触れると粘りを感じる。
硬さと柔らかさが同時に存在している。
内部には油分の気配がある。
乾いた革ではなく、しっとりと沈む質感。
使い込むことで油脂が巡り、表面に艶を足すのではなく、繊維の奥から鈍い光が立ち上がる。
華やかさではなく、深さが増していく方向の経年変化。
傷や穴は、この素材では排除されない。
生きた時間の痕跡として残り、均質ではないこと自体が輪郭になる。
どこを活かし、どこを使うか。
素材を“読む”ことが求められる革。
今回の個体は、京都産のツキノワグマ。
昨年の猟で得られた3頭分。
さらに墨染を施している。
墨は粒子の粗い天然染料。均一には染まらない。
革の繊維の締まり、炭の量、染めの状態。
その時々の条件によって濃淡と揺らぎが生まれる。
黒く染め上げるというよりも、ムラの強いグレーへと沈んでいく。
繊維の起伏や毛穴の痕跡が陰影として浮かび上がり、
一枚の中に複数のトーンが共存する。
一点ごとに異なる表情。
同じ色は存在しない。
熊革は本来、納期も数量も成立しない素材だ。
入るかどうかも分からず、揃うこともほぼない。
バッグのような面積を要するものに安定して使える条件は、まず整わない。
今回の3枚は、その例外。
素材として扱える量と質が、偶然揃っている。
選べる素材ではない。
探して手に入るものでもない。
条件が揃ったときにだけ、一時的に“使える状態”として現れる。
この3頭分が、その状態。
この革を用いたバッグや小物のオーダーも承っております。
ご希望の内容など、詳細につきましてはお気軽にお問い合わせください。